第82章 夢幻泡影
脳みそが、痺れてるみたいだ。
重なった唇から、結合部から感じる熱に、言葉は無いのに何故か会話をしているような気になる。
「っん……っ、ん」
オレの下で足を広げて喘ぐ姿が可愛くて。
何度こうしたか数え切れないくらいのはずなのに、毎回毎回極限まで興奮してしまう。
そして、最中に訪れるこの感じ……記憶とか、感情とかを抜きにして、本能で繋がっているという感覚。
胸の辺りをグシャグシャに掻きむしりたくなるようなこの気持ちの正体が分かる日が来るんだろうか。
……別に、来なくても構わないんスけど。
こんな気持ちには、みわと居る時にしかならないから。
ずっと、一緒にいるから。
「……みわ、海常の体育館にしよ」
「……さっきの……はなし?」
「そ、死んだら海常の体育館で待ち合わせ」
きょとんとした、少し驚いたようなこの表情、好きなんスよね。
大きな瞳が、自分だけを映してる。
「うん……分かった」
OKが出て、ホッとするというのも変な話かもしんない。
こんなの、失う恐怖を和らげるための戯れ言。
こんなものに縋るなんて、自分らしくないのは良くわかってる。
昔、あの体育館にいた時代とは、オレたちを取り巻く何もかもが違う。
年をとって、環境も変わって。
でも、みわを大切に想う気持ちだけは、あの頃と全く同じだ。
高校時代……少しの間だけ一緒に暮らした日々を思い浮かべる。
今はお互いの学校が遠すぎて、同棲はあんまり現実的じゃないけど……いや、直線距離はそんなにないんだし、原チャリとか使えばいけるんじゃないか。
なんて、関係ないコトを考えてないと、すぐイキそう。
「体育館で、待ってるね」
「ちょっと待って、なんでみわが先に死ぬコトになってんスか」
「え……なん、となく……?」
確かにオレは殺しても死にそうにないくらい図太いけど。
言い出したのは自分のくせに、縁起でもないコト言うなと伝えると、みわは少し笑った。