第82章 夢幻泡影
「涼太ぁ……ほんとうに、もう、だめ、下ろして……」
絞り出した声でそう伝えると、涼太は渋々といった声で応じてくれた。
涼太は気持ちいいよりも辛いんじゃないかとか、とにかくもう気になってしまって仕方ない。
「いー感じだったんスけど……よい、しょっと」
「あっ、下ろし」
反論する前に涼太は私を抱えて歩き、ベッドの端へと腰掛けた。
やっと両足が柔らかいシーツの感触を捉えたけれど、身体の真ん中に彼が埋め込まれている状況には、変わりがなくて。
豪華なはずの調度品の数々も、全く目に入らない。
目の前のこのひとしか、認識出来ない。
「大丈夫? まーだ始まったばかりなんスけど」
「ん……っ、んっ」
しがみついていた腕をゆっくり解かれて、目があったと思ったら唇が合わさった。
大きな手が、胸を包む。
なんでこんなに、優しく触れてくれるんだろう……先端を弄られて、ぞくぞくと、甘い快感が背筋を走る。
「お望み通りちゃんと全部、食べてあげるっスよ……実際はみわがオレのを、まるっと呑み込んでるんスけどね」
「また、いじわる、言う……ぅ」
涼太の先端に押されるたびに、呻きのような喘ぎ声が漏れてしまう。
ホッとしたせいなのか、気持ち良さがどんどん加算されていく気がする。
「あ……っ、はっ、はっ」
喉の奥から掠れた音しか出なくなってきて、お尻とお腹の間のところから、じわじわした快感が響いてくる。
「りょうっ、た……ん、いっちゃい、そう」
この、気持ちが良すぎてどうにも出来なくなって、感情と動作の行き場がなくなってしまうのがいつも困る。
「今日はまた、ペースが早いっスねえ」
クスリと笑った彼に突然濃厚な接吻を交わされて、そのまま一気に快楽の頂点まで突き抜けてしまった。