第29章 事件
みわっちが、泊まりに来るって。
その言葉が頭を巡って、ついつい頬が緩む。
下心丸出しかよ。
今後のスケジュール確認したら、次の1日休養日は来月なんスね……。
いやでも、目標があれば頑張れるっス!
それにしても……みわっちの家に、下着泥棒。
みわっちはそんなに気にしてる様子、なかったけど……。
あれから数日、その後は特に何もないみたいだ。
でも、この間海常祭の時に、黒子っちのある質問が、今になって気になってきた。
スマートフォンを手に取り、連絡先から彼の名前をタップする。
『神崎さんのご家族が海常祭に来てたかどうかの質問ですか?』
「そうっス。あん時は気になんなかったけど、なんでそんな事聞いたのかなって」
『……あの日、黄瀬くんと神崎さんを見かけた時とか、体育館裏の近くとかに同じ男性がいるのに気付いたので。
お父さんがいらしてるのかなって』
……みわっちの周りを男がついて回ってた?
「男? 男だったんスか? どんなヤツ? 写真ない? 間違いなく同じヤツだった?」
黒子っちの人間観察力はオレも分かってる。
確信もない事をこういう風に言ったりしない。
でも、聞かずにはいられない。
『はい、間違いなく同じひとでした。50代くらいですかね……見た目的には特に特徴もないおじさんという感じでした』
「なんか他に気付いた事、あったらまたすぐに連絡くれねっスか。お願い」
『……分かりました。すみません、僕の発言で不安にさせてしまっていたら』
「ううん、ありがと。助かったっス」
……なんか嫌な予感がする……。
「あ、黄瀬くん電話終わった? 帰ろうか!」
部室まで戻ると、明るい笑顔のみわっちが迎えてくれた。
「うん、お待たせっス。帰ろう」
……思い過ごしだといいんスけど……。