第28章 デート
「結局、なんだかんだ遅くなっちゃったっスね」
「……だ、だってずっとキスしてるから……」
「だって、みわっちとのキスってマジで気持ちいーんスもん」
サラッと悪びれもなく言う。
こっちはもう、腰がふらふらなんですけど!
「みわっち、さっき言ってた下着泥棒、警察に連絡した方が良くないスか?」
「うん……でも、ホントに最近なの。前までは全然だったし……。部屋干しにする事で防げればいいなって思うんだけど」
「他になんか変な事されてたりは? ストーカーみたいな」
途端に不穏な単語が出てくる。
ストーカー? 私だけを狙ってる、ってこと?
「ううん、思い当たる事はないよ。……ストーカー……考えつきもしなかった……」
無作為に狙っているものと思い込んでた。
……何か……普段の生活でおかしなこと、あった?
……ない……はず……。
誰か不審な人に話しかけられたりした事もないし、本当に心当たりは全くない。
「ごめん、余計な不安煽っちゃったっスね。みわっちのアパート、もうちょいセキュリティがしっかりしたトコだと安心なんスけど」
「貧乏人にはあのアパートが精一杯だよ」
ただでさえ金銭面で迷惑をかけているのに、これ以上贅沢を言うわけにはいかない。
「待ってるって言っときながらまた言うけどさ、うちならいつでも歓迎っスからね」
「……ありがとう」
そうこうしているうちに自宅へ着いた。
楽しかった1日もあっという間に終わりだ。
「今日は、1日ありがとう。……楽しかった……」
「こちらこそ、可愛いみわっち、いっぱい見れたっスよ。
…………その顔、またキスしたくなるからやめて欲しいんスけど」
……本当に、さっきあんなにしたのに……ワガママ言っても、いい?
「……オヤスミナサイの……ちゅー……して、くれる?」
「ちょ、もー……みわっち!」
困ったような声を出しながら、瞳は優しく弧を描いている。
先ほどまでのキスと同等の熱いキスを交わして別れた。
次の丸1日休養日って、もしかして来月?
……そんなに先だと思わなかったけど、ゆっくり心の準備ができるからいいかな。
本当に自分勝手だ。
でも、やっぱり……少し怖い。
まだ暫く我慢させて、ごめんね黄瀬くん。