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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


上下左右、装飾が施されキラキラと輝くキャラクター達に囲まれたエントランスを抜けると、だだっ広いホールのような空間が現れた。

この広さなら、宿泊客が何組かいたとしても窮屈さは全く感じない。
まー、今のオレからしてみたら、受付のオネーサンすら邪魔に思えてしまうんだけども。

いつもならみわにはイスにでも座って待ってて貰うトコだけど、今日は腰を抱いた腕を離さなかった。

無駄な動きなくさっさとチェックインを済ませ、流れるようにエレベーターホールへ足を運ぶ。

エレベーターホールには先客が2組、子ども連れの3人家族と、両親くらいの年齢の男女。
色んな声が音としては耳に入ってくるんだけど、脳みそまで届く頃には言葉の形を保っていない。
隣にいる彼女に意識が集中しすぎているせいだろうか。

どうやらまだ、みわの願いを叶えてやれるまでには時間がかかりそうだ。

「すごい……素敵なホテルだね」

見上げて嬉しそうにそう言ったみわの瞳は、装飾の輝きが映っているのかと思わせるほどにキラキラしてる。

「あっ……ごめんね急がせて、お土産とかお買い物して行ってもよかったんだけど、あの」

そして何かに気がついたかのように慌て出すみわ。
くるくると変わる表情に、思わず笑ってしまう。

「オレと早くふたりきりになりたいんスよね?」

「う」

覗き込むと、また頬を染めて……でも、目は合ったまま。
照れて逸らしてしまうコトも少なくないのに。
なんか嬉しくてついつい、からかってしまう。

「そうなんスよね?」

「……うん、なりたい……涼太とまだまだゆっくり……」

「……反則だって、それ」

はー、やられた。可愛い。無理。

普段甘えないみわの貴重な貴重な貴重すぎるおねだり。

みわのことだ、オレのように不純なものじゃないかもしんない。
でも、そんなのは関係なくて。

「残さずぜーんぶ食べてあげるから、安心して」

ぺろりと耳たぶに舌を這わせると、みわの頬はリンゴのように美味しそうに色づいた。


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