第82章 夢幻泡影
「あ、っ……!?」
出口に向かう人々の流れから逸れて、今はもう閉店時間を過ぎているカフェの柱の陰に引きずり込んで、そのまま唇を奪った。
「ん……っ……」
カフェの窓から僅かに漏れ出る灯りのおかげ で、ぼんやりとみわの姿が浮かび上がっている。
閉じ切っていない瞳は戸惑いながらも、抵抗される気配はない。
まだ固く閉じられた唇を、舌先でノックする。
「みわ……くち、開けて」
「待って、宿、に行くんじゃ」
「その前につまみ食い」
言葉を紡ぐために薄く開いた口から、強引に舌を滑り込ませる。
触れた彼女の舌は熟した果実のように柔らかくて、奪うように吸い付いた。
「っあ……ん」
二の腕を強く掴まれて、支えている腰は無意識にか、不定期に揺れている。
人の気配がないのをいい事に、括れたウエストを撫でながらスキニーパンツに手を忍び込ませ、形の良いヒップを掴んだ。
「ちょっ……りょう、た」
「つまみ食い、だって」
「待っ、あっ」
しっとり汗ばんだ滑らかな双丘の谷間から、そっと指を這わせる。
後ろの穴を掠めるように触れると、びくりと一瞬身体が硬直した。
唇を重ねたまま、上顎を刺激すると今度は小刻みに震えて。自分のする事にちゃんと反応してくれるのが嬉しすぎて、暴走しそうになる。
「んー……ぁ、ん」
みわの意識は明らかに下半身に向かって来ていて、自然と口腔内の水分が多くなる。
そのまま体液を交わし合うと、何やってんだとブレーキをかけようとする理性を、暴れ出した欲望があっさりと蹴散らした。
進めた指に触れたのは、沼のようなぬめり。
みわはまた一度大きく反応して、両の太腿を固く閉じようとした……が、それは結果的に、オレの手を固定しただけで。
二本の指で入り口付近を擦ると、みわは慌てて口を離した。
「涼太……だめ、だよ」
「んー……分かってんスけど、誰もいねえし」
キツく抱きしめていた身体が僅かに緩んだのを見計らって、後ろから触れていた手を太腿の側面を通りながら、前へと移動させた。