第82章 夢幻泡影
このまま力を入れたら折れそうな、ほっそい腰。
密着させた身体が熱くて、否が応でもこの先の展開に期待してしまう。
なんとなく言葉を交わさぬまま店を出て、ゆっくりとホテルへ向かう。
ホテルはパーク直結だから、出口へ向かう人の波からは、途中で外れることになるだろう。
上から見下ろしたみわは、少しぼんやりしてるみたいだ。
目がとろんとしているようにも見える。
酒には強いから、酔っ払った感じでもなさそうだけど……?
流石に多忙の身をテーマパークで朝から晩まで連れ回してしまって、疲れが出ただろうか。
明日のチェックアウトまではのんびりしよう。
アトラクションエリアを抜けると、店が並ぶアーケードへと戻って来た。
「あ、みわ、お土産どうする? 買って行くっスか? 明日帰る時にも買えるけど」
帰り際にお土産を買おうと思っていた人たちが集まっているのか、土産店はどこも人ばかりだ。
疲れてる身体には少ししんどいか。
でももしかしたら、今日のうちに買っておいて明日はゆっくりしたいかもしんないし、一応聞いておこうと思って。
「……涼太」
「ん?」
少し、音量を抑えた声。
別に、このくらいのヒトの数なら普通の音量でも問題ないだろうに。
「あの……」
「うん、オレはどっちでもいいっスよ。買ってく?」
俯いたり、こっちを見たり……何か言いにくい事なんだろうか。
みわは気遣い屋だから、オレのコト気にしてんのかな?
「あの……」
「うん」
「早く……ふたりきりに、なりたい……な」
言葉って、耳に入ってから脳が認識するんだってことを、思い知る。
眉間がカッと熱くなって、鼻先から何かが抜けていくような感覚。
「……了解」
乾いた口でそれだけ返すと、腰を抱いた腕に力を込めた。