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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


「あれ? オレだけっスか、そういうの」

「う……えっ……と……」

正直に言うと、そういうことは多々ある。
涼太の熱は、彼に触れていない時でも簡単に呼び起こされるから。
彼に抱かれている時の幸福感は、忘れられるようなものじゃなくて。

「私も……思い出すよ。涼太と、一緒に居た場所とか……」

言いながらも、勝手に頭の中でその時の映像を上映してしまって、涼太の顔が見れない。

頬だけじゃなくて、身体まで熱くなってきた。

「とか?」

「……とか、色々」

逃げるように視線を逸らして、グラスに残ったサングリアを流し込む。
さっきまではもう少し糖度の高さを感じていたのに、何故かあまり甘みを感じない。

ああ、頭がポーッとする。
飲み過ぎたのかな、でもそんなに飲んでない気がするんだけど。

この席に座ってから口にしたものはちゃんと、思い出せる。
酔ってる訳じゃない筈なのに、身体の内側から揺らされるような衝動に逆らえない。

「まあ続きはベッドで聞くっスわ」

「うん……」

一瞬、時が止まったような気がした。
涼太も驚いた顔してこっちを見てる。
私いま、よく考えないでお返事したよね。うん、した。

「あっ、あの」

「行こ」

促されて席を立つと、左腰に手を回されて、強く引き寄せられた。

洋服を着ているのに、触れているところが熱い。
密着して歩きづらい筈なのに、全然気にならない。
それよりも、こんなにくっついて歩いていたら、誰が見ているのか分からないのに……と思うのに、拒否出来ない。

ドキドキする。
心臓が鷲掴みされたみたいに脈打って、胸の辺りが落ち着かない。

それから、どうやってお店を出たのか覚えてない。
もう閉園時間も間近に迫っているのか、薄暗い中、人々は一方向へ向かって流れている。

皆、浮かべる表情は満足に満ちていて、ここは夢の国なんだと再認識させられる。

また、素敵な想い出が増えた。
いつも貰っているばかりで、私は涼太に何かをお返し出来ているのかな。

好き。
大好き。


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