第82章 夢幻泡影
「これ、どうスかね」
「イメージ、カクテル……?」
楽しい一日の記念に、お客様のイメージに合わせてカクテルをお作りしますと書かれている。
バーテンダーさんって、本当にすごいなあ……。
「折角だし、これにしないスか?」
「うん……!」
会話の雰囲気を読み取ったのか、こちらからお声掛けをする前に係員さんがオーダーを取りに来てくれて。
その後にすぐ、バーテンダーさんらしきひとが私たちの席まで来てくれた。
「差し支えなければ、お二人のご関係を教えてくださいますか?」
「恋人です」
いつもの口調を封印し、涼太はそう即答した。
それからいくつか普段のことについて聞かれたりしたんだけれど、私は何故だかアワアワしてしまって、なかなかうまく会話に混ざれていない気がする。
「お二人それぞれのイメージに合わせてお作りする事も出来ますし、お二人の関係をイメージしてお作りする事も可能ですが、いかがなさいますか?」
「え……」
イメージカクテルって、そのひとのイメージで作ってくれるだけなのかと思ってた。
私たちの関係……を……?
「おもしろそっスね。オレらの関係を、っての作ってもらおっか」
「あ……う、うん」
オーダーしてみたけれど、良かったのかな。
私たちの関係って……他のひとからはどう見えてるんだろう。
ポカポカ照らしてくれる、眩しい太陽のような涼太と、……私はなんだろう、おひさまを浴びながら働くアリさんとか……?
「なんか面白いっスね。オレが尻に敷かれてんのとか分かんのかな」
「……尻に……えっ、涼太が?」
「オレはずーっとみわの尻に敷かれっぱなしっスよ」
まさかの発言に凄い勢いで聞き返してしまったんだけれど、涼太は変わらず楽しそうに笑ってそう言った。