第82章 夢幻泡影
「みわ、ハラ減ってない?」
「うん、さっきのカフェで甘いもの食べたから今はそんなに空いてないよ」
「じゃ、ちょっと付き合ってくんないスか」
「うん!」
時刻はまもなく19時になろうとしているところ。
手は、何かある時以外は基本的に離される事なく、繋いだまま。
夏でも冷房で冷えやすい私だけれど、今日は全くそれを感じないのは、彼の熱のおかげだろう。
でも、そんな事あるわけないんだけれど、繋いだ手を通してこの心臓の鼓動が聞こえてしまいそうで、更に手汗をかいていそうで、なんだかとっても恥ずかしい……。
「こんな感じでいいスかね、後ろの方で悪いけど」
「うん……?」
涼太に連れて来られたのは、アトラクションとかお店とかじゃなくて、パーク内の道路の沿道……の後方にある、木の陰。
沿道ギリギリにはロープが張ってあって、道路には出られないようになってる。昼間は、通行出来た場所だ。
それに、数え切れないほどの沢山の人達が座ってる。
なに、しているんだろう……?
「もうすぐっスよ」
状況が掴めぬままキョロキョロと辺りを見渡していると、突然、空から降ってきたのは大音量のパークアナウンス。
レディース&ジェントルマン?ボーイズ&ガールズとか聞こえたような、なんか聞こえたような。
呆気に取られているうちに、続いて聞こえ始めたのは音楽。
まるで教会のような荘厳な鐘の音に続いて、ミュージカルのような華麗な音たちが、絶え間なく耳に届く。
前の人だかりも、ワッとざわめいて盛り上がりだした。
一体なにが起こるの?
隣の涼太に聞こうとしたのも束の間、沿道の端から現れた無数の光の塊に、視線も言葉も全て奪われた。