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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


このテーマパークの建物は全てが作り物で、目の前を流れる川も勿論そうなんだけれど……まるで海外に来てしまったみたいにリアルな風景に、現実感があるようでないような不思議な感覚。

涼太は、私を座らせた後に隣に座る……のかと思いきや、そうじゃなかった。
彼は私の両肩をそっと掴み、そのまま顔と顔の距離を縮めてくる。

「あ、あの」

「さっきの……みわの気持ち、ムダにしたくないから乗ったっスけど」

「う、うん、ごめんなさい私咄嗟に良い案が思い浮かばなくて」

「そうじゃなくて」

う……ち、近い。
涼太の琥珀色の瞳の中に、私の影が映ってる。
いつも、諭される時はこうだ。

「みわ、オレ達がこうして遊んでるのは、いけないコトっスか?」

「いけない事……じゃないよ。いけないわけ、ないよ。涼太だって、普通に遊園地で楽しんで欲しいよ」

「そうじゃ、なくて」

さっきと同じセリフなのに、今度は何か言い含めているような、そんな語調に変わった。

「オレが、みわと恋人同士のデートをするのは、いけないコトなんスか?」

その問いの可能性は、考えてなかった。
有名人な涼太だって、他の皆と同じように楽しむ権利があるって、それは言い切れるんだけど……

「……あ、え……っ、と……それは」

「それは?」

涼太が、私と並んで、ネズミーランドで恋人同士の時間を、過ごす……

「……あんまり、良くない、事のような、気がしてる……」

涼太は、胸を大きく上下させて、深いため息をついた。

「オレはさっきの女のコ達に、言おうと思ってたっスよ。彼女待たせてるからゴメンって」

「えっ」

「だってそうっスよね? 隠す必要なんてどこにもないじゃないスか」

……返す言葉が、ない。
自分のこころの中が、整理できない。

「ねえ、みわ。みわは何をそんなに怖がってるんスか?」



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