第82章 夢幻泡影
「みわ、大丈夫っスか?」
「あ……うん、大丈夫」
情けないことにふらつく身体を支えて貰いながら、アトラクションの出口を離れる。
「ちょっと座ろっか」
「あ、ありがとう、気分悪いとかじゃないから大丈夫だよ。突然のスピードアップについていけなかっただけなの」
「確かに、いきなりフルスピードなのにはオレも驚いたっスわ」
「前からの風で、顔が変形するかと思った……」
突然スピードアップしたコースターに適応出来ないうちに、あっという間に終わってしまった。
涼太はアハハと笑うと、何も言わずに私の腰を抱いたまま、アトラクション横にあった濃いブルーのベンチに座った。
手すり部分に星が散りばめられていて、これも夜空を表しているのかな、と気がつく。
「オレ、ノド渇いたからなんか買ってくるっスわ」
「わっ、私行くよ!」
「いいっスよ、みわはそこに座って席取っといて!」
「あ……っ」
涼太は片手を上げながら長い足を捌いて、先にある屋台のようなワゴンへと向かってしまった。
涼太とすれ違う人々が、皆、振り返る。
「……ねえ、今のもしかして黄瀬涼太じゃない?」
「え、あのバレーかなんかの?」
「いや、バスケバスケ。めっちゃカッコいいの。あたし、好きなんだあ」
「へー、検索してみよ。……あ、ホントだイケメン。サイン貰って来たら?」
「行ってみよっかなー」
「いこーよいこーよ!」
その言葉に、ギクリと心臓が軋む。
帽子を被ろうが全然隠しきれていないオーラ、というか目立つもの、涼太。
どうしよう。
解決策が生まれないままいると、涼太は両手に袋を持ってこちらへ戻ってくる。
そして、その延長線上には、彼へ向かっていく女の子2人組。