第82章 夢幻泡影
「続けていける?」
「うん!」
可愛らしいおとぎの世界から出て来ると、今度はさっき涼太が貰ってくれた、ラピッド・チケなるものの出番らしい。
アトラクション入り口が見えてきたけれど、その先にはドーム型の建物があるだけで、一体何のアトラクションなのかはそれだけじゃ判別がつかなくて。
「みわ、コースターイケるっスか?」
「コー……スター?」
一瞬、コップの下で水滴を受け止めてくれるあれを想像してみたけれど、この場合そうじゃなくて……
「ジェット、コースター……ってことだよね?」
「そそ」
確かに看板には"スターリースカイ・コースター"って書いてある。
涼太はにっこり、うんうんと頷いたけれど……ジェットコースターに乗るとどんな感じになるのかが、ピンと来ない。
でも、乗った事がないという気がしないのが不思議だ。
多分私、はっきりと覚えていないだけで、乗った事はあるんだと思う。そして、その単語に不快感は感じられない。
「うん、大丈夫!」
アトラクション入り口の看板に書いてある注意事項に目を通して、自分に該当する項目が無いことを確認して、再度頷いた。
「オッケー! じゃ、行くっスよ〜!」
既にアトラクションに並ぶ列自体が別のものになっていて、係員さんに案内されたのは、隣のぎっしりひとが並んでいる列とは対照的な、ガラガラの道。
区切られているロープによって作られたその道をひたすら歩くと、すぐに乗り場が見えてきた。
「すごい、全然待たなくていいんだね」
「タイミングによってはこっちも混むけど、快適っスね」
なんだか少しズルをしているような気になってしまったけれど、涼太に宥められて、2人席が10列ほどある銀色の細長いコースターの座席へと着席した。