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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第82章 夢幻泡影


再び靴を履くと、不思議と足の重さがなくなっているのに気が付いた。
着替えていた部屋を出ると(試着室、ではないようだったけれど、なんていう名前なのかな……)、変わらぬ熱気が頬を打ったけれど、さっきよりは不快じゃなくなってる。

私はヤマアラシ、涼太はハリネズミの顔のキャップを被って、いざ出陣。
普段絶対着ないような鮮やかなTシャツが、ちょっと眩しく感じて。

「みわ」

涼太はそう言って、左腕の肘を少し持ち上げた。
……これって……?

「ほら、行くっスよ」

ひょいと右手を掴まれて、そのまま涼太の左腕の二の腕を……って、これって、腕を組む、という、あの、あれでしょうか!?

「りょ、涼太」

「オレ、あれに乗りたいんスよね」

反論さえも聞き入れられず、通した手もかっちり固定されてしまい、どうにも出来ない。

「いこ!」

太陽みたいな笑顔に誘われて、頬と気持ちが緩む。

甘えちゃって……いいのかな……。

いっぱい、楽しい時間を過ごしたい。
気が付かれないように、組んだ腕に少しだけ力を込めた。



涼太が向かったのは、どうやらお子さんも乗ることの出来る、優しいアトラクションみたい。
列に並んでいるのは、殆どが子連れだ。

入り口の看板には待ち時間が20分と書いてあったけれど、10分ほどを過ぎた頃に、乗り場が目に入ってきた。

どうやら、川?のような道を、二人乗りの丸太型の小さな船に乗って移動するみたい。
ハンドルがないところからすると、恐らく自動制御で動くのだと思うけれど……?

「みわ、足元気をつけて」

「うん」

涼太に手を引かれ座席に座ると、スタッフの方がすぐにお腹のところまで金属のバーをおろしてきた。安全バーみたい。

ゆらゆら、私たちを乗せた船はゆっくりと進み出した。

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