第82章 夢幻泡影
内装は焦げ茶色に統一されていて、木張りでどこか高級感のある店内は、どうやらお土産屋さんみたい。
キーホルダーやぬいぐるみなどが、所狭しと陳列されている。
お買い物、するのかな。
涼太は迷い無く歩みを進めて、Tシャツなどが置いてあるコーナーの前で立ち止まった。
「これ、どうっスかね?」
涼太が両手で掴んで見せてくれたTシャツは、前も後ろも……全面にネズミーランドのキャラクターが描かれている。
また、それぞれにテーマカラーがあるらしく、各キャラが各々のカラーになっているから、Tシャツはとにかくカラフル。
まるで、さっきみた風船たちみたい。
「うん、すっごく可愛いね、似合うと思う」
顔が負けちゃいそうなくらい鮮やかな色合いだけれど、涼太の華やかさはその比じゃない。
お洒落な彼の事だ、きっとうまく着こなすだろう。
「ネットで見て、これがいいと思ったんスよね〜。これにしよっと」
涼太はそのTシャツが積まれている山をめくりながら、XLサイズとMサイズの2枚を手に取った。
「みわはSでもイケそうだけど丈が短いっスかねえ」
「え?」
うんうんと頷きながら、涼太はいつの間にやら持って来ていた買い物カゴへとTシャツを入れた。
「あれ……?」
2枚?
と、いうことは?
「んーあとは、コレっスね」
涼太は嬉しそうに、ヤマアラシとハリネズミのキャラのキャップを続けてカゴに入れる。
「みわ、こん中だとどの色が好きっスか?」
「えっ、こ、これかな」
「オッケー」
促されるまま選んだパステルカラーのスポーツタオルを2枚カゴへ放ると、また手を繋いだままレジへ。
ほんの一瞬だけレジのお姉さんは目を丸くしたけれど、すぐに何事もなかったように会計は終わった。
「ここ、着替えられるスペースがあるのがいいんスよね」
「えっ、いま?」
「今着ないでいつ着るんスか」
涼太は、あははと爽やかに笑って、キャラクターがたくさん描かれたカーテンを開けた。