第82章 夢幻泡影
「みわ、眠れなかったんスか?」
「あ、ううん、大丈夫!」
どうしようと悩んでいるうちに、あっという間に木曜日を迎えてしまった。
運転席に座る涼太は、早朝なんて感じさせないほどに爽やか……早朝というより、今、3時なんだけれど。
そう、駐車場がとっても混むから、水曜の深夜のうちに移動しておこうって、涼太の提案だった。
昨日はバイトも早く帰って来れたから、準備を終わらせて少しでも寝ておく……予定だったんだけれど、なんだかドキドキして無駄に興奮してしまって眠れなくて、布団の中で目を瞑っていただけになってしまって……。
皆にアドバイスを貰ったとおり、パークの歴史とかそういうのは後にして、まずはキャラクターを調べる事にした。
ネズミーランドは、名前の通りネズミのキャラだけがいるのかと思いきや、それだけではないみたい。どうやら齧歯類のキャラクターが勢揃いしているらしい。
パークホームページの【キャラクター】の項目をタップすると、愛らしいキャラクターがずらっと並んだイラストが表示された。
ハツカネズミから始まりビーバー、リス、レミング、トビネズミ、ヤマアラシ、チンチラ……それはそれはもう数が多過ぎて、名前が覚えられない。
ノートに書いて暗記しようとしたら、それも違うとあきに叱られて……気を取り直して、好きなキャラクター探しを頑張った。
「みわ、ネズミーランド初めてなんスよね、キャラとか分かるっスか?」
「うん、少しだけど調べたよ。ヤマアラシの【ぽーきゅ】が可愛くて、好きかも」
ヤマアラシの【ぽーきゅ】は、まんまるのフォルムがとっても愛らしい。
まつげが長くって、きらきらしたおめめがなんだか涼太みたいだ。
「やっぱり勉強頑張っちゃったっスよね……ごめんごめん、もっと気楽でいいんスよ」
いつもの涼太の優しい声が、ふんわりと車内に響いた気がした。