第82章 夢幻泡影
『結構家空けてたし、やる事いっぱいあるんじゃないスか? 今日は無理に会わなくていいっスよ』
「え……」
確かに、今回は長い滞在だったから、洗濯物だけでもかなりの量だ。
だから昨日のうちに洗濯を済ませて、今日は朝からお布団干しとお掃除をするつもりだったのに。
こんなに気を遣わせてしまうなんてもう、何重ものミスに目もあてられない。
……でも……涼太だって、あんなに楽しみにしてくれていたのに。
やっぱり約束してたのに寝坊して、怒ってしまったよね……。
「あの……涼太さえ良ければ、だけど、これから……」
『あー、勘違いしないでほしいんスけど。今日はもう無理せず休息日にして、次の空いてる日……木曜って言ってたっスよね? 代わりにその日、行きたいトコがあるんスわ』
「うん、行く、行くよ、どこにでも行くよ。本当に、ごめんなさい。どこに行けばいい?」
『ネズミーランド』
「えっ?」
『ネズミーランドに行こうかなって思ってたんスよ。こないだ森山センパイのバイト先の会社で配られたっていう優待チケット貰ったんスわ。行かない? ネズミーランド』
「ネズミーランド……」
ネズミーランド……夢の国と称される、大規模テーマパークだ。
と、いう位にしか私には知識がなくて。
あきは行列が苦手だからあまり行かない、って言ってた。
遊園地……
『あ、平日とはいえ夏休み期間だから混むし、嫌なら無理にとは言わないっスよ、みわがもし良ければ』
「わ、行きたい……な」
遊園地。
ジェットコースターにメリーゴーランド?
寝坊したくせに、こんなウキウキするなんて申し訳ない……けど、どうしよう、すごく楽しそう。
『よーしっ、決まりっスね! じゃあ今日は木曜に向けてゆっくり休むんスよ』
私を責めるようなことは、一切言わなくて。
それが涼太の優しさだって、分かってる。
私が今できること……ちゃんと疲れを取って、万全にしなきゃ。