第81章 正真
『余計な心配かけたっスね』
「う、ううん……違うの」
バスケ選手である彼が暴力沙汰を起こしたら、どうなるか……なんて、分かってるに決まってる。
涼太が一番分かってるはずだ、そんな事。
それでも、それでも行動に移した涼太のこころを考えると、胸が引き千切れてしまいそう。
涼太はそうだ、いつも私の事を自分の痛みのように感じてしまっていたじゃないか。
「涼太……ごめんなさい」
『ん、何を謝ってんのか分かんないんスけど』
「……ごめん、なさい……」
この言葉以上のものが出てこない。
申し訳ない気持ちが次から次へと溢れてきて、軽率な自分への後悔の色が深みを増して、みぞおちに滞留していく。
『オレが勝手にやったコトだから』
「違う……よ。私が、私がしっかりしてれば、そもそもそんな事にはならないもの」
何をやってるんだろう。
涼太の足枷になるような事をして、何してるの。
なりたい自分とは全く真逆のことをしてる。
『誰がなんと言おうと、みわを傷付けたヤツは許さない。これまでも、これからも。それだけは変わらないっスから。みわがなんと言おうと』
「涼太……」
強い声音に、反論する言葉もない。
涼太は、頑固だもの。
どんな言葉も届かないと思う。
私は、これだけ想って貰ってるんだ。
今まで、どれだけ助けて貰ったと思ってるの。
ごめんなさい、ありがとう、そう伝えたら涼太は話題を転換してしまった。
もう、この話を引きずっても、涼太が閑田さんを殴った事実が変わるわけではない。
……だから絶対に、涼太に迷惑をかける事は、もうしない。
たとえ、この関係を解消する事になったとしても、絶対に彼の足を引っ張るような事はしない。
ここに、強く誓う。