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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第81章 正真


緊張しながら、スピーカーの向こうへ意識を集中させる。
一定のリズムの無機質な呼び出し音は2回鳴ったところで、止んだ。

『みわ?』

「あ、もしもし、うん、みわです。……涼太、今いい?」

『お疲れっス! もう練習終わったんスか? メシは?』

「あっ、あの、これから食べるよ」

『終わってからでもいいっスよ、オレこれからちょっと残って練習しよっかなって思ってたし』

「あ……そうなんだ。うん、それじゃ、終わったらまた。あんまり無理、しないでね」

そう言われて、すんなりと終話してしまった。
だって、これから練習だというのに、余計な気を回させたくないもの。

ちょっと、本当にご飯を食べて気分を落ち着かせよう。

ご飯……どうしようかな。
何か買って、ホテルで食べようか。
それとも、お店で済ませちゃうか。
食事のことまで気が回っていなかった。

結局、駅前にあるスープ専門店に入り、スープセットを頼んだ。
夏だからこそ冷え防止に、生姜がたっぷり入った鶏白湯スープと、お野菜が沢山入っているボルシチ。

カウンターに着席すると、ガラスの向こうには沢山のひとが行き交うのが見える。
それぞれのひとに、それぞれの人生がある。
当たり前の事なんだけれど、凄い事なんだって、実感する。

涼太の声は、いつもと全く変わらなかった。
もしかしたら私の勘違いかもしれない。

幸いにも、閑田さんの怪我は大事に至るようなものではなくて。

うん、本当に勘違いかも。
でもあの閑田さんの言葉……。
でもでも、涼太がそんな事するだろうか。
ウィンターカップでの灰崎さんとの一件、あの時だってカッとする事なく、いなしてたじゃないか。

ううん、やめよう。どれも想像でしかない。
ちゃんと確認するまで、予想や想像で決め付けたくない。


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