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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第28章 デート


映画の内容は、簡単に言うと身分違いの恋。

でも、お互いどうしようもなく惹かれ合ってしまい、身体の関係を持ってしまう。

描写がとにかく切なくて切なくて、泣きそうになってしまうシーンばかりだ。

右手でこっそり持っていたタオルを目に当てる。

左に座っている黄瀬くんには見えないはず。

『……愛してる……』

想いが伝わった感動的なラストシーン。

じわりと滲み出る涙を拭った時、肘掛けに掛けている左手の上にそっと手が重なってきて、思わずぴくりと反応してしまった。

冷房の効いた館内にも関わらず、温かい手。

久しぶりの黄瀬くんの体温に、意識が全て手に集中してしまう。

『愛しているよ、お前だけを……』

感動のラストなのに、心臓がうるさい。
映像が全く入ってこない。

そっと私の指の間に長い指が滑り込むと、周りの音なんか何も聞こえなくなってしまった。

ぎゅっと握ってくれている。
力強くて、大きな手。

どうしよう。これ、どうしたらいいんだろう。
気付くと画面はエンドロールになっていた。

手はまだ重なったまま。
恥ずかしくて黄瀬くんを見れない。
黄瀬くんは、こちらを見ているの?

幕が閉じ、照明がつくと次々と席を立つ客。
私は手を動かすことも黄瀬くんの方を見ることも出来ないまま、固まっていた。

「みわっち……行こうか」

すっと手が離れてしまう。

ヤバい、また顔赤くなってるかな。
冷房効いてたから大丈夫だよね。

今度は手を繋いで歩いてくれるのかと思ったけど、外ではやっぱり繋がなくて。

モデル事務所からなんか言われたとか……やっぱり私と繋ぐのは恥ずかしくなったとか……。

ひとり、悶々としてしまう。

「映画、面白かったっスね」

「うん、感動しちゃった」

「お昼、スタイリストさんに教えて貰ったトコ行こうと思うんスけど」

もう全てコースはお任せしてしまっている私。

自然食レストランに入って、新鮮で美味しいランチを食べた。

日中は、お喋りをしながら街歩きをしたりお茶したり。
なんてことないことを話して笑いあって、という時間を楽しんでいた。

朝、黄瀬くんを待っている時とは真逆で、一緒にいると時間はあっという間。

真上で輝いていた太陽はいつの間にか傾き、秋の訪れを感じさせる夕陽が黄瀬くんの髪を照らしていた。



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