第81章 正真
美味しいサンドイッチをぺろりとたいらげて、温かいコーヒーを頂く。
外は暑かったからアイスにしようかなと思ったけれど、やはり店内は冷房がよく効いていて、ホットにして正解だった。
ひとくち飲んで口の中に広がる香ばしさと苦みを楽しんで、何口かいただいてから少しミルクを入れた。
これもまろやかでとっても美味しい。
ひとりでこうやって外食を楽しむのはあまりない。
自分のためにあまりお金をかけたくなくて、おうちで食べる事が殆どだったけれど、たまにはこうして来てみるのも良いのかもしれない。
もしそれで良い店が見つかったら、今度は涼太と……
いけない、今ちょっと昨晩の事を思い出してしまった。
切り替えないといけないのに……緩む頬を手のひらで押さえて、選手達の情報が書かれたノートを開いた。
それぞれの選手の弱点や長所を分析しつつ、合ったトレーニングや食事などのアドバイスをする……文字にすると簡単だけれど、容易い事ではなくて。
選手の性格も大きく影響してくるから、表面だけのアドバイスでは何の意味もないと、マクセさんからは教えて貰ってる。
アドバイスをするだけなら誰でも出来る。
お前がやる事に意味があるんだと証明しなければならない。
私がやる事に意味がある……そんな自信、今は全くないけれど、いつか胸を張ってそう言えるようになりたい。
その為に、今は小さな事でも気にかけて、改善出来るところはないか、活かせるところはないか、ひとつも取りこぼさないように研ぎ澄ます訓練をしなければならないんだ。
よし、気合いを入れて、予定よりも少し早く体育館へ向かおう。
充電は満タンだ。
我ながら、単純というかなんというか……。