第81章 正真
まだ、心臓がドキドキしている。
なんだったんだろう、さっきの。
あまりに突然の発言で、また何も返すことが出来なかった。
こんなに、大好きなのに。
ちゃんと、お返ししなきゃいけないのに。
……ちゃんと、次会った時に、顔を見て伝えよう。
ウダウダ考えちゃいけないと、頭を左右に振ってから部屋を出た。
自分の部屋に戻って鞄を開け、使い慣れた手帳に涼太からのメモを挟む。
デジタルばかりに囲まれた生活だから、彼がペンを取って書いてくれた文字が、とても貴重で。
そっと紙を撫でてから、手帳を閉じた。
そのまま鞄へ戻し、すぐに荷物をまとめて部屋を出る。
そして、足を向けたのは……涼太が取っていた部屋。
なんとなくふたりで過ごした部屋を去り難くて、また先ほどまで寝ていた涼太の部屋に戻って来てしまった。
小さくため息をつくと、鞄をベッドサイドへ置いて、もう一度真っ白のシーツの上に横たわる。
生理中で身体は怠いし、いつも寝不足だからすぐに眠れるはず……だけど、なかなか眠りにつける気配がない。
目を瞑っているだけでも疲れは取れるんだと、聞いたことがある。
寝なくてもいい、また今日も暑くなるだろうから、少しでもここで体力を温存しておこう。
涼太の、香りがする気がする……。
その後も結局眠れはしなかったものの、シャワーを浴びてすっきりしてから早めのチェックアウトを済ませた。
朝ごはん、何を食べようかな。
涼太にパワーを貰ったからか、今日は朝から食欲がある。
いつも大学の近くで食事をしているけど、今日はホテルから徒歩5分ほどの所にあった、昔ながらの喫茶店といった様相のお店へ足を踏み入れてみた。