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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第81章 正真


手のひらサイズの白いメモ帳の下部には、ホテルの名称が書かれている。
どうやら、部屋に備え付けのメモらしい。

彼らしい元気な字で、言葉が綴られていた。

"急にごめん、始発の新幹線で帰ることにした!
また連絡して
次会えるの楽しみにしてるから
フロントに鍵だけ返してくれると嬉しい!
涼太"

文字の勢いといい、文章の構成といい、かなり急いで書いたメッセージのようだ。
きっと涼太も疲れていて、ギリギリまで眠ってしまったんだろう。
時間がなかったら、後でスマートフォンで連絡くれても良かったのに……。
このマメさは、彼らしい。

紙の端をそっと押さえてゆっくりとメモを切り離した。

自分の部屋に戻ってシャワーを浴びて、荷物を取って、朝食を……やらなきゃいけないことはいっぱいあるけれど、まずはメッセージアプリで、涼太にひとことを送信する。

画面を消そうとした途端、メッセージの横に既読マークがついて、瞬時に画面が黒塗りに切り替わった。

一瞬何が起こったのか分からなかったけれど、着信中の文字に、慌てて応答ボタンをタップする。

『もしもしみわ、今ヘーキ?』

「うん、大丈夫。おはよう、ごめんね、お見送りしようと思ってたのに」

今日は朝早くからの練習じゃないから、駅ないし空港までお見送り出来ると思っていたのに。
呑気に寝てしまった自分、ばか……。

『いーんスよ、気持ち良さそうに寝てるから起こしたくなかったんスわ。よく眠れた?』

「うん、今までぐっすり寝ちゃってた」

良かった、と言ってくれる声が優しくて。
でも、そんなふわふわの声に乗って微かに聞こえる音は……信号の音?
歩行者用信号が青になった時の、ピヨピヨという音に聞こえる。

始発で新幹線に乗ったなら、今この時間は新幹線の車内のはず、だけれど……?

「涼太……今、新幹線?」

『……あー、ちょっと遅れちゃったんスよ。これから乗るトコ。また帰ったら連絡するっスわ』

「そうだったんだ。気をつけてね」

今、ちょっとだけ間があった……どうしたの、かな?

『みわ』

「うん?」

『愛してるよ』

「ほっ!?」

涼太はあははと笑って、そのまま通話を終えてしまった。


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