第81章 正真
夢、かな。
目の前には綿毛みたいなふわふわが飛んでいて、足元は雲みたいに白く、柔らかい。
試しにジャンプをしてみると、まるでトランポリンみたいに反発する足元が、なんだか楽しい。
あたりを見渡しても景色と認識できるものはなんにもなくて……そのうちに、あちらこちらからシャボン玉のようなものが飛んできた。
キラキラ艶めくそれは、なんだかとても神聖なものに見えて、暫く目を奪われていた。
そのうちに、すぐ近くまで寄ってきたシャボンのひとつに思い切って触れようとして……地面が突然揺れ始める。
地震とかいうよりも、地鳴りのような、地の底から響いてくるような振動を感じて……視界が切り替わった。
「……」
あれ……どうし、たんだっけ。
薄暗い室内風景は、宿泊していた筈のホテルのものに酷似している。
今のは、夢だった?
そうだよね、だって景色もなかったし、変だったもの。
ヴーヴーと響く音に気がついて、頭のすぐ横にあるものに触れた。スマートフォンだ。
「……アラーム」
いつものアラームは、朝の7時を伝えてくれている。
朝……昨日、どうやって寝たのか記憶にない。
昨日……
「涼太っ」
慌てて起き上がっても、隣に彼の気配はない。
私が宿泊している部屋のものよりも大きなベッドが、なんだかとても寂しく感じて。
昨日、彼と抱き合ってキスをして……そのまま暫く触れ合って、それで……
「うそ……また寝ちゃった、んだ」
確かに、途中から全く記憶にない。
肌と肌が触れ合って、心臓の音がすぐ真横から聞こえてくるみたいにドキドキして、でもすごく安心して……そのまま夢の中へ誘われてしまったなんて。
先ほどの呼びかけにも返事はない。
ベッドを抜けてバスルームへと向かったけれど、そこにも彼の気配はなかった。
「涼太……」
途方に暮れて再び部屋に戻ってくると、ベッド脇のテーブルにメモが置いてある事に気が付いた。