第81章 正真
"ヤッてる時なんて脳内麻薬出てんだから、訳わかんなくなって当然だって。 むしろ、その時に、素を見せられるかどうかが大事だと思うよ、あたしは"
熱くなった頭の中で再生されるのは、大事な友達の声。
いつだったか、あきがそんな事を言っていた。
訳わかんなく……なっちゃう、本当に。
幾度となく肌を合わせる中で、みっともない所をいっぱい見せた。
涼太以外になんて、絶対に見せられない顔だ。
ううん……涼太に見せるのだって、本当はとっても恥ずかしいんだけれど……。
涼太は、色んな事を教えてくれる。
知識も、感情も。
「……涼太、よく、知ってるね」
「あー、うん……姉ちゃんによく言われるから、自分でも調べたりしてんスわ」
「お姉さん、に?」
「みわちゃん大事にしろって、会うたびに言われるんスよ……連れて来い連れて来いうるさくてさ」
少し眉を下げて困ったようにする表情は、少しだけ幼さが残る。
先ほどまでの雄々しい表情の中に垣間見える、あどけなさ。
いちいちドキドキして、心臓がいくつあっても保たないよ……。
「もうみわは、ウチの家族の一員みたいなもんスから。いやむしろもう、全員そのつもりっスわ」
「そんな、大それた事」
いやいやいや、そんな図々しい事、出来ないよ。
素敵な黄瀬家の一員だなんて、贅沢がすぎる。
反論しようと思った途端、こめかみに落とされるキス。
ちょっと叱られるような、そんな気分になるのが不思議だ。
彼の唇は、一体何役をこなせるのか。
「今まで……深く気にしたりしなかったから……女のコについてちゃんと調べたりすんの、初めてなんスよ」
「そう……なの?」
涼太は色々知っているから、ううん、知ってると思い込んでいたから、まさかそんな風に調べてくれているなんて、驚きだった。
「知らないコト……多すぎっスわ……こんなに、大事なのに」
また、今度はお布団にくるまれるみたいに優しく抱きしめられて、胸が痛くなるほど熱い。