第81章 正真
「かんっぜんに、オレが悪かったっスわ」
「……えっ」
口を塞いでいた両手が離れ、今度は突然抱きしめられて。
上半身裸の私と、服を着たままの涼太……ふたりの間には布があるはずなのに、それすらも感じられないほどに、熱い。
「抑えなきゃって思う……それなのに、気が付いたらそんなのなかったみたいになってる」
「……うん……」
後頭部を押さえる手も、おっきくてあったかい。
おんなじ、気持ちなんだ。
「みわ、どうしよーもないくらい、好きなんスよ」
「りょう、た」
好きで好きでどうしようもなくなる。
この、言い様のない安心感と高揚感は、なんなんだろう。
いつか、この感情が変化する日が来るんだろうか。想像も、出来ないけれど。
「好き」
どちらの言葉だっただろうか。
涼太か、私か、それともふたり同時に発したものか。
ふたりとも、下着だけになった。
何も身につけていない上半身が触れ合って、温度差がなくなっていく。
まるで交わっている最中のように、全身が溶け合う感覚。
肌と肌が触れ合うだけで、目と目が合うだけで、言葉を交わすだけで、こんなにも満たされるのはこのひとだけ。
「あ……ん、あっ」
唇を吸い合って、柔らかい部分を刺激し合う。
濡れた息遣いや漏れ出る声にも煽られて、愛撫は濃厚になる一方だ。
「みわ……やっぱさ……このまますんのは……良く、ないっスわ……」
「どう、して……?」
どうして、なんて、なんという質問をしているんだろう。
こんなダラダラと出血しているような状態で、出来るわけないじゃない。
涼太だってきっと気持ち悪くなってしまうと思うし、何より汚してしまうもの。
「ごめん、なさい……汚れちゃうもんね……」
「いや、そうじゃなくて……イッちゃうと、良くないんだって聞いたんスよ……」
確かに、女の身体はオーガズムを迎えると、子宮内に侵入してきた精子を奥へと迎え入れるために吸い上げるように動くって……つまり、経血が逆流する可能性がある、ってことなんだろうか。
頭が、ぼんやりする。