第81章 正真
それはまるで、神聖な儀式のようで。
上から見下ろした長い睫毛がまばたきに合わせて揺れると同時に、赤い舌が胸の真ん中をぺろりと撫でた。
「っ、あ……」
続いて快感が送り込まれてくるかと思いきや……固く尖らせるようにしたそれは、頂の輪に合わせてゆっくりぐるぐると回るだけで。
大きな手は乳房の下に添えて置かれているだけで、それ以上は動いてくれない。
「ん……」
どうしよう……すごく……もどかしい。
こんな風になるつもりなんて微塵もなかったのに。
はしたない欲が胸元からお腹を通って下りていって……下半身に火をつける。
身体は、涼太を覚えてる。
この先、彼が触れたらどれだけ気持ちいいか、彼と合わさるとどれほどの快感なのか、どれほど幸せな気持ちになるか、全部。
はしたなく喘ぐ声を聞かれたくなくて、必死に口をつぐむけれど、彼の動きに合わせて吐息と言う名の喘ぎが口の端から漏れていってしまう。
「涼太……」
どうにもならない想いが愛しい彼の名を呼ぶ形で出て行ってしまい、それを受け止めてくれた琥珀色の瞳が、こちらを向いた。
一瞬、その中に映った自分のシルエットが視認出来て……そのまま、瞳に吸い込まれてしまったのかと思った。
私が吸い込まれていったのではなく、涼太が距離を縮めて来たんだ。
「そんな物欲しそうな可愛いカオして……誘ってるんスか」
「んん……っ」
触れるだけのキスは、次第に熱を帯びて来る。
あれだけ焦らされていたのが嘘のように、大きな手が胸に触れた。
「……ぁ、んぅ」
口内を探るように動く舌と強弱をつけて的確に気持ちの良いところに触れる手に翻弄されて、押し倒されている事にも気が付かなかった。
もう、この思考すら今すぐにでも霧散してしまいそう。
この腕の中では、どうでも良くなってしまう。
なにもかも。