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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第81章 正真


「……お茶?」

涼太から不思議そうに返された言葉にハッとした。
ここ、自分の家でもなんでもない。
このドアの向こう側にはベッドとテーブルしかない簡素な部屋しかなくて、勿論お茶が入れられるスペースなどあるわけもなく。
備え付けのケトルでティーバッグのお茶を……その前にティーバッグを買って来なきゃ。

……そう、ホテルの前のコンビニで買い物をしてきたわけでもない。
部屋にあるのはお茶のペットボトルくらいだ。

「あ……お茶、と申しますのは」

代替案を、と思ったけれどそもそも私はそんな器用さを持ち合わせていない。
見事に言葉を詰まらせていると、涼太は肩を震わせて笑っていた。

「……それは、誘われてるって解釈で、間違ってないっスよね?」

「う」

そのストレートな言葉に、文字通り卒倒しそうになった。

「まだ時間大丈夫なら、オレの部屋来る? ここより広いと思うし」

「あ、え?」

「シングルに空きがなかったんスよ」

「あ、うん、そうなんだ」

「またエレベーターに乗る事になるけどいいっスか?」

「……うん、だいじょうぶ」

どこまでも私に気を遣ってくれる涼太と、自分の事しか考えられない自分。
再び大きな手に誘導されて、10階へと降り立った。

涼太の気遣いで、エレベーターホールにあった自販機で飲み物とちょっとしたお菓子を購入。
もう結構利用している筈なのに、こんな自販機が置いてあることすら知らなくて。
もっと色んな所に目を向けなきゃだめだ。視野を広く持たなきゃ。

「……広い」

「とはいえやっぱビジネスホテルっスよねえ」

涼太に促されて足を踏み入れた室内には、私の部屋にあるのと同じテレビが乗った長テーブルの他に、窓際にテーブルセットが1式。

そして……大きなベッド。

「テキトーに座って。しんどかったら横になっててもいいっスよ」

「大丈夫だよ、ありがとう」

お言葉に甘えて、窓際の椅子に座った。



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