第28章 デート
ジリリリと騒ぎ出した目覚まし時計を、手のひらで勢いよく止める。
平日とは比べ物にならない程の目覚めの良さだ。
時刻は6時。
いつも通り朝ご飯を食べようとしたけど、食欲があまりなかったので、軽くお茶漬けで済ませた。
あきから、いい香りがすると評判のシャンプー・ボディソープそれぞれ1回分のパウチを貰った。
シャワーを浴び、使用済みのタオルと共に洗濯機を回す。
その間にドライヤーをしながら、スマートフォンでヘアアレンジのページを開いた。
あきから借りたヘアアイロン。
ちょっとウェーブをかけると可愛くなると教えて貰って、毎日少しずつ練習した。
慎重に髪を巻くと、今までで一番いい出来だった。
ハーフアップにして、大きめヘアクリップで固定。
すべてのアイテムはあき提供だ。
お礼は、今度クレープを奢るってお約束。
メイクは全く分からなかったのでまた次回教わるとして、今日は髪型と服装だけ、新しい自分。
袋から出しておいたワンピース。
私服でスカートは初めてだ。
さつきちゃんが私に似合うと、淡い黄色地で青の小花柄の大人っぽいワンピース。
身長があるから、ぶりぶりに可愛いのよりもスッキリしているフォルムのがいいとの事でこれを選んで貰った。
予算がない事を伝えてあったから、そんなに高くない服を見立てて貰った。
見た目的にはそんなに安っぽくない。
バッグは、、昔から使っているショルダーバッグを持っていくことにした。
あきが貸してくれると言ってくれたんだけど、流石にバッグまで借りるのは抵抗があって。
そして、玄関に行った時に今更ながら気が付いた。
靴が、ない。
しまった。オシャレに無頓着というのはこういう時に困る。
服を買ったら靴も買わなきゃ合わない。
……残念ながらいつものスリッポンになった。
9時半頃から、そわそわと待機している。
落ち着かない気持ちで、あっち行ったりこっち行ったり。
時間が過ぎるのがすごくゆっくりに感じて、ポストの郵便物でも取りに行こうと、外に出た。
あれ……?
アパートの入り口の塀から、黄色い頭が見える。
まだ9時半だよね?
そんなに早く、待っててくれてるの?
黄瀬くんはこちらに気付いてないようだ。
そっと部屋に戻り、荷物を持って、急いで部屋を出た。