第28章 デート
明日は休養日だ。
1日休養日になるのはそうそうない事だから朝から出掛けようという約束になっているんだけど、中止じゃないよね……?
2人の間に、デートに関する話題は出て来ない。
もう、黄瀬くんの中ではナシになってしまったのかな?
帰り道、今日も2人の間には距離がある。
「……あの……黄瀬く」
「明日は10時に迎えに行ってもいいっスか?」
あ、デートのことだ。
良かった、ナシになってない。
「う、うん!」
「ゴメンなんか今言おうとした?」
「ううん、明日の事だったから大丈夫!」
「そっスか。じゃあ、また明日ね」
優しい笑顔。
「うん、おやすみなさい……」
やっぱり手を振って別れるだけ。
でも、良かった。良かった。
少し軽くなった心で部屋に入る。
朝干した洗濯物を洗濯ピンチごと取り込み、畳もうと1つずつ外していると気がつく。
「あれ……また、ない……」
今朝間違いなく干した。
ショーツが1枚、ない。
また飛んで行った?
でも、今日は風はなかったし……。
ある予感に心臓が跳ねた。
ドクドクと嫌な音を立てる。
……まさかこれ、下着泥棒?
この間のも風じゃなくて、盗まれた?
やだ、気持ち悪い……下着、これからは部屋干しにしよう……。
1階だから仕方ないのかな……。
家賃の安い所を選ぶと、やはりどうしても1階が多くなってしまうけど、前のアパートではこんなことなかったし。
なんか、怖い。
でも、外に干さなきゃ大丈夫。
明日は楽しみにしてたデートだし、しっかり準備して寝なきゃ!
緊張のせいか、この出来事のせいかなかなか寝付けなかった。