第81章 正真
「ん、んまい」
焼き物の小鉢に入ったどて焼きをひとくちつまんで、涼太は嬉しそうに漏らした。
「ここね、美味しいお料理ばっかりなんだよ」
「うん、しかもなんか色んなの食べられておトクな感じがするっスわ」
以前お聞きしたところ、このお店の店主は、かつては都内有名ホテルのシェフをしていたんだそうで。
そこで数十年修行を積み、地元に帰るのをきっかけにこのお店を立ち上げたんだって。
大阪に来たひとたちが、色んなものを食べられるようにって、メニューには大阪名物がずらりと並べられている。
それでいて、決して専門店に味が劣ることがないと、旅行サイトなどでも五つ星の評判みたい。
簡単に説明すると、涼太はうんうんと頷きながらアスパラガスの一本揚げに噛り付きながら言った。
「さすがみわ、上手くやってんスね」
彼はそう言うと、ビールのグラスをぐいとあおった。
「え、上手く、って?」
「いや、皆とメシ行ったりとかフツーにしてんだなって。まあ、みわの人当たりの良さなら当たり前なんスけどね」
その発言から、涼太には心配をかけてしまっていた事を知る。
「あ……うん、少しずつだけれどね、皆とちゃんとお話出来るようになってきたよ。ごめんね、心配させて」
「んーん。心配なんかしてねえっスよ。だって、みわだし」
あ、これも美味いと言って、涼太はとん平焼きを頬張った。
優しいな。
本当に優しいひと。
なんて返せばいいのか分からないまま、話題はバスケの話に。
「涼太……今日はお仕事で来たの? 遠征とかじゃないよね?」
「うん」
あっさりとした返事ひとつで、今度はチーズの串カツをぱくり。
とろりととろけるような断面が、とっても美味しそう。
あんまり触れない方がいいのかな。
この話題はそれまでにして、ふたりで食事を楽しんだ。