第28章 デート
「……するのが、怖くて……」
黄瀬くんは、優しい。大好き。
ても、それとは関係なく……怖い。
「まあ、あたしはその気持ち分かるよ。女だから。でもね、男はきっと分からないよ。好きだから抱きたい。ただそれだけ。
まあ、待っててくれてるって事は、黄瀬なりにあんたの事考えてくれてるんだろうけどね」
「うん……」
「2人の事だから、これ以上首突っ込む気はないけどさ。もう少し、黄瀬の事考えてやったら。好きなら」
「……うん……」
「アイツ女なんてよりどりみどりだろうに。いやー見直した。エライエライ」
今週、休養日はデートする事になっている。
全然そんな事考えてなかったんだけど……。
……。
ひとに言われてやっと気付くなんて。
黄瀬くんがどんな気持ちでいるかなんて、ちゃんと考えた事があったかな。
私はいつも自分の事ばかりだった。
守られて、優しくされて。
「あたしから言っておいてなんだけどさ、そんなに思い詰めないでよね。ごめん」
「ううん、ありがとう。元はと言えば私が話を振ったんだし。私、気付かないフリしてたのかも……」
我ながら単純だと思うけど、今黄瀬くんと会うのが、少し怖い。
私は彼を満たしてあげられていない。
その現実を、今ハッキリと認識したから。
どんな顔していればいいんだろう。
好きなだけじゃダメなことだってある。
でも、学校に行けば席は隣だし……ああ、またグダグダ考えるのは悪い癖だ。
翌日から学校でも、なんとなくよそよそしくなってしまった。
授業中、何気なく横を見るとバッチリ目が合ってしまって、思わず逸らしてしまったりとか。
毎度毎度、極端すぎるんだよ私!
でも本当に、あれから全く色気のある話はなく。
一緒に帰っても、手を繋ぐとかキスするとか、自然としなくなっていた。
でも別に、気まずいとかそういうのもないし、いつも通り、2人の時間は仲良く過ごしているんだけど……。
もしかして、もう他に好きな人が出来ちゃったのかな。
黄瀬くんは優しいから、嫌になったけど言えずにそのまま付き合ってくれてるのかな。
ウィンターカップに向けてチーム一丸となって頑張っているから、そんな事にこだわっている暇はないのかもしれないけど、やっぱり気になってしまって仕方ない。