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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第81章 正真


「ちょっと待てよー、秀ちゃんと結婚するってのは嘘だったんかよー」

うっ、幼少期の自分の発言……申し訳ないけれど本当に全く微塵も思い出せない。

「いや、嘘っていうか子どもの頃のお話みたいですし、覚えていないのは本当に申し訳ないのですが……」

でもきっと、閑田選手は言葉ほどこの思い出に頼っていない気がする。
この話をする時の彼の口調は、真剣味が欠けているから。

「みわ、マジで俺の事ちょっとそういう対象になるか見てみてよ、一度でいいからさ」

そう、この言葉の真意も掴みかねているの……彼は、どういうつもりでこう言っているのか全然分からなくて。

「いえ、閑田選手は大切なチームメンバーです。そんな風に見る事は出来ません」

きちんと、お答えしなきゃ。
もしかしたらからかっているだけかもしれないけれど、ただの冗談かもしれないけれど、きちんと。

「分かんねーじゃん、そんな事。俺結構いい物件だと思うよ? 自分で言うのもなんだけど」

……本当に、どういうつもりなんだろう……。
どうしよう、この言い合いには終わりが無さそうだ。

「閑田選手、本当に、」

困ります、って強く言うほどの事態にはなっていない。
閑田選手は練習中にこうやって言ってくる事はないし、普段は本当に普通のチームメイトだから。

でも、こういう時は本当に困ってしまう。
閑田選手を傷付けずにお返事出来る方法ってないかな……。

とりあえず、手を離して欲しいんだけど……

「あの、閑田選手……」


「みわ!」

時が、止まった。
ううん、正確に言うと止まったのは時間じゃなくて、体内の感覚器官の働きだ。

目の前の閑田選手の視線は、私の後方に向けられている。

なんの聞き間違いなんだろうか、って一瞬思った。
だって、今私の名前を呼んだのは。
その、声は。


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