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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第81章 正真


「じゃーね、ちゃんとメシ食いなよ。部屋まで持ってったげよか荷物」

「いえ! 大丈夫です! エレベーターという文明の利器がございますゆえ!」

反射的にそう答えたら、閑田選手はまた腹を抱えて笑い出した。

「いやー、みわは飽きないわー。分かった分かった。んじゃまた元気なったらメシ行こうなー。折角もう飲めんだし」

「あ、そうですね。また皆さんと行きたいです」

特別にお酒を飲むのが好き、とかじゃないけれど……やっぱり、機会を設けてコミュニケーションをとるのが大切だ。
もう試合も段々と迫ってくるし。

「うわーその返し、傷つくわー」

「えっ、え?」

眉間に深いシワを寄せて、閑田選手は天を仰いだ。
何か、変な事を言ってしまっただろうか。

「俺とふたりきりはお断りっつーことだよな?」

「あ、いえ、そういう意味じゃ」

そんなつもりは無かった。
ただ、頭の中に浮かんだのが皆で飲んでいる光景だっただけで……。

「……みわさ」

「はい……って、えっ」

閑田選手は、突然私の右手を掴んだ。
そのままその手の甲を、彼の口元に当てられる。
彼の意図が分からなくて、抵抗出来ない。

「ホントに俺と付き合う気は無いわけ?」

「……あの、ですから私にはお付き合いしている方が」

「じゃあ、別れたら考えてくれるんだよな」

「え……」

「彼氏がいなきゃ、俺は対象になる?」

「え、え」

「ねえ」

おかしな流れになっている事をはっきり自覚して、掴まれた手を振りほどこうとしたけれど、彼の力が緩む事はない。

閑田選手が、恋愛対象に?

「す、すみません……考えた事も、ありませんでした」

本当に、これっぽっちも考えた事がなかった。
涼太以外のひとのこと、なんて。

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