第81章 正真
「みわはさー、なんでそんなに必死になれんの? 誰かの為に頑張れんの?」
「なんで、と言われても……そもそも、誰かの為に頑張ってるとかそういうのでは……」
なんでだろう?
私は誰かの為に頑張ってるのかな?
ううん、自分がやりたいからやっているだけだ。
皆が持てる力を最大限に出せるよう、そのお手伝いをしたいだけ。
「みわは、高校時代のマネージャーの時はどんな事してたん?」
「え……っ、やっている事自体は今と変わらないです……データ取ったりとか、フォーメーションを考えたりとか、練習や試合を録画したりとか……」
「ふーん。みわがしたいことって、それなん?」
「それ、とは」
「サポートとかデータ取りとかビデオ回したりとかさ。そういう裏方の仕事って、普通やりたがらないもんじゃん。みわは本当にそれがやりたい事?」
なんだかちょっと既視感を感じる。
昔、スズさんがマネージャーになりたての頃、似たような事を言ってきたような記憶が蘇る。
「私……私は、これがしたいんです」
はっきり言える。
これだけははっきり言える。
目立たないかもしれないけれど、脚光を浴びることはないかもしれないけれど、私はこれがしたい。
やりたい事をやらせてもらってるんだもの。
「みわは結構、俺達側の人間じゃないかなって俺は思ってるけど」
「閑田選手達、側……?」
「そ。前に出て行って、誰かを引っ張って行くような存在」
「ええっ! それはないです!」
私は涼太の近くにいるから分かる。
涼太は、ひとよりも物凄く努力をするひとだけれど……それだけじゃない何かも持っている。
凡人では絶対に超えられない、絶対的ななにか。
閑田選手も涼太たちと同じ部類のひとで……私が同じだなんて恐れ多すぎて想像したことすらない。
「ふ~ん、そうかねぇ。俺はいつかみわは大物になると思うけど」
「それはそれは……恐れ入ります」
そう言って貰えるのはとっても光栄だけれど……
実際の私は今、を生きるので精一杯なのです。