第81章 正真
時間も経ったし、お薬も飲んだし、涼太から元気を貰ったし……で、辛い生理痛の時期はなんとか乗り切ったものの、やはり生理中は不快感がつきまとう。
有名な水泳選手で、生理中の方が実力が出せるからと、大会に合わせて生理周期を調整している方がいたな……本当にこれって、個人差がある。
……最近、少し経血の量が増えて来た気がする。
ちょっと疲れが溜まっているのかな。
ズシリと重たい下半身をなんとか引きずりながら、一日の予定をこなした。
「ふぅ……」
誰もいなくなったトレーニングルームで、重たい書類たちを抱え上げると、ひとりでにため息が漏れた。
今朝の夢の所為で寝不足の身体に加えて、貧血ぎみだ。
何か、元気が出るもの食べなきゃ……と自覚しながらもあれこれ想像したけれど、食べたいと思えるものがなくて。
今日はこのままホテルに直行して、すぐ寝てしまおうか。
涼太にはあれだけ口うるさく言っているくせに、自分自身の事になるとてんでいい加減。
ちゃんとしなきゃいけないのは分かっているんだけれど……身体が怠い。
「みわ、お疲れー」
「あっ……閑田選手、お疲れ様です」
「まだその呼び方……大丈夫? なんか唇が紫色だけど」
「あっ、大丈夫ですもう帰りますので……」
あんな事があった後、練習中は気にならなかったけれど、こうしてスイッチがオフになった後にふたりきりになると、何を話していいのか分からなくて気まずい。
「ごめん、みわに聞きたい事があってさ」
「あっ、そうだったんですね、すみません。何でしょうか」
また自意識過剰を爆発させてしまった。
慌てて書類の山をテーブルに休ませ、閑田選手のデータが記録されているファイルを探す。
あ、これだ。
「黄瀬涼太ってどんなヤツ?」
「…………え?」
まさかの問いに、時間が一瞬止まって……次に気付いた瞬間には、書類の山が雪崩を起こしていた。