第81章 正真
『そう言えば紫原っちに彼女がいたんスよ、結構長く付き合ってるみたいで』
「そうなんだ。そう言えば、そんな子が居たって聞いた事あるような気も」
『その内、誰かの結婚式に出席したりするんスかねぇ……』
涼太のその呟きに、ポッと頭に思い浮かんだのはウェディングドレス姿のさつきちゃん。
隣には青峰さんが並んで……お、お似合いすぎる……!
そうなったら、涼太達が余興をやったりするんだろうか?
あんまり想像出来なくて、でも皆きっと頼まれたらやるんだろうななんて思って、想像しただけで勝手に含み笑いが出てしまった。
『あ! なに笑ってるんスか?』
「ふふ……ううん、結婚式に参列する皆を思い浮かべたらちょっと面白くて」
『……ちょっとだけ、安心したっスわ』
「あ……ご、ごめんなさい。あの、本当に……いつもの、あの、お腹が痛くて、ダウンしていただけだから」
『あ、そんな時期? ホントに毎月大変っスね……あんま無理しないでゆっくり休むんスよ』
「うん、ごめんね」
不思議だ。
涼太と話していたら、自然と嫌な事は忘れて、笑ってた。
時々行くカウンセリングよりもずっと、気持ちが楽になる……。
『また謝ってる』
「あっ、そう、だよね……ありがとう、涼太」
『はは、お礼言われるようなコトしてないっスけどね』
このひとの存在が、救いになる。
ファンのひとでも、涼太がこの世界に存在しているというだけで助けられているひとがいっぱいいるだろう。
本当に、すごいひと、だなぁ。
「あ……ごめんね、そろそろ準備して向かわないと。今日は朝練から参加する予定なの」
『そっか。オレはもう少ししてから出るっスわ。忙しい時間にごめん』
「ううん、お話出来て嬉しかった……いつもありがとう、涼太」
じわりと溢れてくる涙のせいで声が変わってしまわぬうちに、通話を終了させた。
もうお腹も痛くない。
なんだかパワーを貰えたみたいだ。
慣れないスマートフォンを操作してメールを1通送ってから、立ち上がった。