第28章 デート
数日後の部活帰り、駅前のファストフード店にて。
部活が終わって帰ろうとしたら、あきと偶然会って。
「あんた達って、まだヤッてなかったんだ」
私の相談に、あきが目を丸くしてそう言った。
「こ、声が大きいよ……!」
「え、なんで? 嫌いなの? セックス」
「そ、そうじゃないけど」
あきには、過去の事は話していない。
わざわざ話すような事でもないというのと、単純になんとなく機会を逃していたのだ。
黄瀬くんと肌を合わせるのは嫌いじゃない。
嫌いじゃないというか、触れ合うのは好きだ。
でも、夏休みに拒絶してしまってから黄瀬くんも進展させようとはしてこないし、あの体育館以降、なんとなく触れ合う事自体、避けてしまうようになっていた。
「……え、つまりペッティングまではするけど挿入だけしてないってこと?」
近くにお客さんがいなくて良かった。
こんな話を女子高生がしてるなんて。
あき、ハッキリ聞きすぎだから!
「えっと……うん、そう」
「どこまでやってんの?」
情事の事なんて、誰にも話した事がないし死ぬほど恥ずかしくて、きっと今顔が赤くなってるのが分かる。
「ちょっと……あの……い、いちおう……」
「え、イクとこまで見られといて、そんでまだ1回も挿れてないの?!」
「そ、そう……」
あきは眉間にシワを寄せて、大きくため息をひとつついた。
「あんた、そりゃないわ。相当オニだね」
「う……」
「ってか黄瀬がよく我慢してんなあ。
なんかいけ好かないヤツだと思ってたけど、ちょっと見直したわ」
「そうだよね、我慢……させてるよね」
「相当ね。あんたさ、男側の都合って考えた事ないっしょ。抱きたいんだよ、男は。
あたしの彼は社会人で少し年上だけど、それでも興奮したらもう止まらない。
高校生なんて、ヤりたい盛りだからそれ以上だろうね」
男側の都合。
勿論考えてないわけじゃない。
でも、こうやってハッキリ言葉にされるとショックだった。
我慢をさせている自覚はある。
でも、黄瀬くんなら待っていてくれるって、勝手にそう、黄瀬くんをいいひとに仕立て上げてた。
それって、自分の事しか、考えてなかったんだ。
「黄瀬に同情するわ……好きな女抱けないとか、地獄だろうね」
胸に鉛が落ちたようだった。