第81章 正真
ひたすらに細長い廊下を走り抜ける。
ドアくらいあってもいい筈なのに、先程から全く見つからない。
何故か足がもつれてもつれて、何度も転びそうになって、焦ってまた体勢を立て直す。
背後からは罵声が浴びせられ、振り向かないようにただただ走った。
誰が追いかけて来ているのか、見たわけではない筈なのに恐ろしくて恐ろしくて仕方がない。
でも、これだけはハッキリと分かっている。
捕まったらおしまいだ。
最大出力を以て走っているのに、声のような、存在感のような感覚がどんどん近付いてくる。
ダメだ。捕まる。このままじゃ、捕まる。
また、またきっと
そこまで考えて、場面が切り替わった。
私は、何も身に付けていない。
肌の感覚は全く感じないのに、いやに視界だけがクリアで、目の前にいる男の顔がはっきりと見えている。
……筈なのに、顔を認識出来ない。
見た事のある顔だとか、こんな人相だとかそういう感情が湧いてこない。
男は私の両足を大きく広げて、勢いよく屹立を突き込んで来た。
さっき走っていた最中の床の感覚とか、今横たわっている床の冷たさなんて一切感じなかったのに、秘部の痛みだけは強烈に神経を刺激する。
声を上げたいのに、声が出ているのかさえも分からない。
痛い、痛い、やめて、助けて、そんな思いばかりがグルグル回って、何も出来ないまま呆けている内に律動はどんどん激しくなって、それがやっと止まったと思った瞬間、膣内にじわりと広がるように感じる生温かい気配。
絶望が、塗り広げられていく。
「……っ!」
目の前が、開けた。
視界に入って来たのは男ではなく、天井のライト。
夢、だった……?
さっきまでとは違って服をちゃんと着ている。
陰部が濡れている感じがして慌てて起き上がると、精液ではなく、生理中だったことを思い出して安堵した。
いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。
強い痛み止めを飲んでしまったからかもしれない。