第81章 正真
なんか、足の先がドロドロってなったみたいな感覚。
そんで、体重が何十キロも増えたような感じで……頬はなんだかひんやりと冷たい。
それに加えて、この全身の体重のかかり方……オレ、横になってる?
寝たんだっけ、昨日どうしてたんだっけ。
そろりと目を開けると、目の前は見たことのない風景。
薄暗いからハッキリ見えないけど、ホテルって感じじゃない。
自室でもみわの部屋でもない。
ギクリと心臓が唸る……待て、オレ、もしかしてお持ち帰りされた?
でも全裸じゃない。セーフだセーフ。
ん、そもそも昨日はどうしてたんだっけ。
そうだ、昨日は……紫原っちとメシ食いに行ったんだよな。
解散ってどうしたんだっけ、あの個室居酒屋。
タパスみたいなちょっとした料理が美味くて、思ったよりも酒が進んだんだった。
起き上がると、布団やベッドでなく床で寝ていた事を知る。
身体がギシギシと軋むようだ……でも不調はそれくらいで、二日酔いになっている気配は無い。
みわと電話するって……電話、してないよな。
尻のポケットを探ってスマホを出し、履歴を確認したが通話した形跡はない。
メッセージアプリに未読の数字が出てたけど、その中にみわからのものはなかった。
「……黄瀬ちんさ〜」
「おわっ! ビックリした!」
スマホの光のせいで余計に周りが見えなくて、そんな中突然話しかけられたもんだから、飛び上がらんばかりに驚いた。
「マジで、ここまで運ぶの死ーぬーほーどメンドーだったかんね〜」
紫原っちと飲んでたのは、そんな遅い時間じゃなかったハズ。
でも、この様子だとオレはきっと爆睡して……
「ごめん紫原っち、タクシー代も払うっスわ……」
「青山で新しく開店した店のスイーツBOXよろしく〜」
ブルルとスマホが震え、メッセージアプリの未読数が加算された。
紫原っちとのトークルームに表示されたのは、パティスリーのHPのURLらしい。
「お安い御用っス……」