第81章 正真
そこまで考えて、ふと黒子くんが言っていた事が頭に浮かんだ。
"皆が二十歳になったら、お酒の席でも開いて集まりたいですね。黄瀬君はトップバッターなので、待たせてしまうと思いますが"
……あれ、紫原さんのお誕生日って、まだ先じゃ……。
「……む」
彼の名前を呼びかけて、以前同級生と食事に行った時のことを思い出した。
あの時、まだお酒が飲めない事を指摘したら、凄く空気が悪くなった。
あきにも、言い方が良くないと注意して貰った。
言い方、気をつけないと……だ。
『ん? 何〜?』
一見面倒臭そうな態度とは裏腹に、紫原さんって結構細かいところに気がつくひとだ。
私が何かを言いかけたと思って、気にしてくれたんだろう。
「……あっ、あの、いえ、紫原さんのお誕生日、あの、まだ先かなって」
う、無駄に含みのある言い方になってしまった。
だからなんだよ、という感じになってしまうかも。
『あ〜、酒飲んでんのは黄瀬ちんだけだし〜。俺はノンアルコールカクテル』
「あっ、そう、なんですか……」
意図が伝わっていたのか、的確なお返事を頂いてしまって、さっき以上にどもる。
『なんかみわちん、元気なくね〜?』
「あっいえ、はい、そんな事は……」
お腹は痛いし、なんだかもう何を言っているのか分からなくなってしまって、彼の不思議な雰囲気に呑まれて、あれよあれよという間に事情を説明してしまっていた。
『……ふーん』
「すみません、変な事を言ってしまって。紫原さんが未成年なのに飲んでるのを咎めようとかそういう風に思ったんじゃないんです」
『別にそんな風に思ってねーし。みわちん、ちょっと難しく考えすぎなんじゃねーの?』
「難し、く?」
『黄瀬ちんみたいなのはちょっと特殊だけど〜、みわちんはちょっと気にしすぎっつーかさ〜、合わないヤツに気を遣いすぎじゃねーの』
気を、遣いすぎ……。
『全員に好かれるなんて無理っしょ〜? 別に、嫌われたってい〜し、分かってくれるヤツがちゃんと居ればそれで』