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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第81章 正真


「みわ、大丈夫か」

「え」

「唇、紫になってる」

そう言われて、自分の唇に指を当ててみると、確かにひんやりと冷たい。

「あ……冷房で、冷えすぎてしまったのかもしれません」

閑田選手は、オイオイと言いながらポリポリと頭を掻いた。

「なんかみわって、なんつーか……」

「あ、冷え性というだけで、大丈夫です。具合が悪いわけではありません」

正直に言うと、冷えてるとか寒いとかいう感覚はないんだけれど……私自身のことで閑田選手に余計な心配をかけたくない。

「いや、そうじゃなくて……なんつーか、加害者を擁護する気は全くないけど、なんかこう、みわってさ、なんか狙われやすそうっつーか」

「やっぱり、そうなんですね……」

閑田選手は非常に言いにくそうにそう言ったけど、妙に納得してしまった。
お母さんの言葉に間違いはないみたいだ。
私が全ての原因だって。

「いや、変な意味で捉えないで欲しいんだけど。100パー加害者が悪いのには変わりない。けどなんか、危なげっつーかさ……」

「……今以上に気を、つけます。ご迷惑がかからないように」

自分は無知だという事実を知る事が必要だと、昔の偉いひとも言っていたもの。
もっともっと、強くならなきゃ。

「……今日はもう帰るわ。悪かったな」

「お気を遣わせてしまって、すみません」

バスケの話だけではなく、不要な心配までさせてしまった。大反省だ。
私はサポートスタッフとして、選手達を支える存在でなくてはならないのに。

「みわ」

閑田選手は、ドアを開けようとノブを掴んで、振り返った。

「はい」

「人が良いってのは、確かに長所だとは思う。誰にでも真似できるもんじゃない。でも、いざって時に自分を守れるズル賢さを身に付けないと、呑まれるぞ」

「いざという時に……」

いざという時に、自分を守れるように。
そうだ、いつも私はそれが出来ていなくて……だからあの時も。

私が、もっとしっかりしていれば。
もっと強ければ。


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