第81章 正真
「わ、私、閑田選手だからって思って」
……そう、閑田選手だから、こうして部屋に招き入れた。
彼は冗談を言いつつも、いつも面倒見が良くて、ひとが良いと分かっているから。
信頼出来る、チームメイトだから。
だからこそ、この展開がショックだったんだ。
「……いや、分かってるよ、分かってるけど。信用してくれてんの、分かってっけどさ」
閑田選手はまた謝って、それからまた硬い口調に戻る。
「信用してくれてんのは嬉しいけど、俺だって今日、みわがオッケーだったら、ヤッてたよ。彼氏持ちだろうがなんだろうが関係ないし。そんなに聖人君子じゃない」
「そんな……」
「男って、きっとみわが思ってるよりももっと下半身でモノ考えてるようなとこ、あるぜ。そんな奴ばっかじゃないけど、まあ大半は」
「……」
過去の色々と、漠然とした不安で胸やけしたみたいに気持ちが悪い。
「……気をつけ、ます」
「飲み会とかにホイホイ行くようなタイプとは思えないけど、デートレイプドラッグなんか日常茶飯事だ。飲み物残して席立つなよ」
凄く胸を抉られるような単語だけど……飲み物を残して席を立つなって?
「……どういう、意味ですか」
「トイレとかで席立ってる間に、残ってた飲み物にクスリ入れるんだよ。そんで、眠らせてレイプする」
今度こそ、本当に息が止まるかと思った。
涼太が……過去に遭った被害を思い出した。
あれは、特殊な事じゃなかったんだ。
「覚せい剤ってさ、みわが思ってるよりもずっと、身近にあるよ。セックスドラッグとか言って、蔓延してる」
「……そう、なんですか……」
身体は眠っているのに、感覚はこれ以上にないくらい過敏になるんだと、閑田選手は話してくれた。
涼太が受けたいっぱいの傷……トラウマに悩まされたりしていないだろうか。