第81章 正真
「でさあ、みわ」
「はい」
閑田選手の希望で、飲み物と軽く食べる物をコンビニで買って、そのままホテルの私の部屋へと直行した。
狭いシングルルーム、小さなテーブルセットしかないから、私はベッドの端に腰掛ける事になりそう。
早速資料用バッグの中から、紫原さんのプレーが収録されたメディアを取り出したんだけれど……。
「まさか、DVD観ようとしてる?」
「え?」
まさか、という彼の問いの意味があまりに分からなくて、少しの間動きを止めてしまったけれど……よく考えても、やっぱり分からない。
「観ようと、してますが……?」
「みわ、俺さっきコンビニでゴム買ったの気付いた?」
「ごっ!?」
動揺して、デッキに入れようとしていたディスクを取り落としてしまった。
ゴム、ゴムって輪ゴムじゃないよね。
それって、こ、コン……
「大丈夫です、見てませんので大丈夫です!」
レジはお互い別会計だったから、彼の買った物は見ていない。
見られたら恥ずかしいと思ったのかな……?
「そーじゃなくてさあ」
ディスクを拾おうとした腕を、大きな手が掴んだ。
何が起きたのか認識出来ないままいると、私の身体は浮き上がって、次の瞬間には背中にスプリングの感触。
目の前には閑田選手。
「……え……」
「俺、みわと寝れると思って来たんだけど」
「ま、待っ」
両手は彼の右手に捕まってしまい、動かせない。
足の間に彼が居るせいで、身動きが取れない。
彼は太ももを、私の陰部に押し付けてくる。
そのままグイグイと擦りながら、片方の手で胸に触れた。
「みわだってそのつもりで呼んだんだろ?」
声が、出ない。
身体が、動かない。
まばたきすらも出来ないまま、頭は完全にパニックに。
息が、苦しい。
どうやって、呼吸ってしていたんだっけ。