第81章 正真
テーブルの下であれやこれやと足の向きを変えながら話をして、キリの良い所で閑田選手は新しい飲み物を買って来た。
「いや、俺そこまで考えてなかったや」
「優秀なセンターのポジション取りを参考にした方が良いと思います。私がおすすめするのは、秋田県にある陽泉高校のセンターだった紫原さんって選手なんですけど……」
大学からバスケを始めた閑田選手は、紫原さんのプレーを知らない。
彼はストリートではバスケを続けているみたいだけれど、黒子くん同様、もう選手としてコートに立つつもりはないみたいだ。
引く手数多だったみたいなのに……彼らしいというか。
「うーん、大学でやってないなら知らないな。映像持ってる? あるなら今度見せてよ」
「あります。ホテルに置いてある鞄に入っているので、明日持って行きますね」
「マジかよ。持って来てんの? じゃーさ、解説して欲しいし一緒に観ない?」
「そうですね、その方がいいでしょうか」
「場所はどこでもいいよ。帰るの面倒ってんならホテルまで行くし、俺の家来てもいいし」
「え……」
一緒に、ってそういう事?
どうしよう……ふたりきりとか、良くないよね……?
「ん? あー、なんか悪い意味で取った? 全然そんなつもりなかったから気付きもしなかった」
「す、すみません」
自意識過剰だ。
閑田選手は純粋に言っただけなのに、何を余計な事まで心配して……。
「じゃ、じゃああの、すぐそこなのでホテルまでお越し頂いても良いですか」
バスケの話をするだけなのに、失礼な事を考えてしまった。
「相変わらず他人行儀だなぁ……」
「す、すみません」
ホテルに移動しながら、紫原さんのプレーを思い出していた。
涼太も、リバウンド時に人と人の間に着地するの、上手だよね……紫原さんから吸収したのかな。
皆、いま何してるのかな。