第81章 正真
真夏って、自販機にほとんどホットがない。
今すぐに、みわにあったかいものでも飲ませてやりたいのに、そう簡単には見つからなそうだ。
「涼太の選んでくれたお花……すっごく綺麗だった。ありがとう」
「あー、前にもあそこでお願いしたんスよ、あのオネーサンの腕が良くて」
お供え物の知識なんか全くない、ひとりで墓参りに来たオレに、あれやこれやと親切に教えてくれたのは記憶に新しい。
「腕が……っていうのもあると思うけど、私だったら選べない組み合わせばっかりだったから、やっぱり涼太も凄いよ」
「そう、っスかねえ」
「お墓……すごく、近代的なお墓だったね。こんな所初めて来たから、びっくりしちゃった」
「……ん、オレもそうっスわ」
みわは、オレにこれ以上気を遣わせまいとさっきから一所懸命におしゃべりをしようとする。
無理に止めることも出来なくて、更にひとことふたこと交わしながら、オレ達は車内へと舞い戻った。
いつもよりも目線が落ちている事には気付いてる。
今オレに出来る事……
「……ちょっとノド渇いたんスけど、付き合ってくれる?」
みわは、こくりと頷く。
車内サウンドの音量をミュートにまで絞って、近くにあったカフェへと向かった。
近くのカフェ。
聞いたことない店だから、きっとチェーン店ではなさそうだけど、土地が安いのか、敷地はかなりのものだ。
店内に入ると、一番最初に鼻腔を刺激したのはコーヒーの香りではなく、甘い……パンケーキを焼く匂いだった。
「涼太……ごめんね、気を遣わせて」
あたたかいロイヤルミルクティーをひとくち飲んで、みわは申し訳なさそうにそう言った。
オレは、深みのある苦さのアイスコーヒーを一気にグラス半分ほどを飲み干す。
「ん? オレはノド渇いただけなんスけど」
「あ、そうじゃ、なくて……」
うまく言えなくて困っている姿に萌えるとか、意地が悪すぎる自覚はあるけど、今更どうこうすることも出来ない。