第27章 海常祭
「黒子っち、火神っち、お待たせ!」
駅前のファミレスで、2人と合流した。
「思ったよりも早かったですね。今日は片付けはないんですか?」
「うん、今日明日と両日片付けするのは、模擬店のクラスだけっスから。うちは展示だから明日の午後」
学園祭は明日の午前中までが一般公開で、午後からは全校で片付け。
夕方からはいつも通り練習ができる。
「私も来ちゃって良かったの?」
黒子くんが優しく微笑んだ。
「神崎さんも合わせて呼んだつもりでした」
「そっか、なら良かった」
「何、頼みますか?」
黒子くんがメニューを渡してくれるけど、残念ながら食欲は全く湧かない。
「いやオレらは正直腹一杯なんスよね」
「黄瀬くん、ドリンクバーだけ頼む?」
「もう2人は頼まないんスか?」
「はい、火神君と山ほど食べたのでもう頼みません」
火神さん……模擬店でもあんなに食べていたのに。
胃袋ブラックホールなのかな?
「じゃあ、店はもう出て、ストバスコート行かねっスか?」
「おっ、いいな」
結局、黄瀬くんと火神さんが1 on 1をしているのを、黒子くんと外から眺めているという図になった。
「黄瀬くん! バッシュじゃないんだから全力でやっちゃだめだよ!」
「了解っス!」
「もう……調子いいんだから」
「神崎さん、黄瀬くんとはうまくいってますか」
……この質問、最近誰かにも聞かれたな。
さつきちゃんか。
「どうなんだろう。なんか色々あるからよく分からなくなっちゃってるんだけど……」
「……さっきの……体育館裏での黄瀬くんに驚きました。神崎さんの前だとあんな感じなんですね」
「うん、大体あんな感じだよ」
「……黄瀬くんは、才能もある人ですし、モデルという華やかな仕事もしているからか人間不信になってしまっているんですよ。でも、あれを見て安心しました」
人間不信。確かに。
人の気持ちを信じきれていないというのはある気がする。
芸能界の大変さなんて、私には絶対分かってあげることは出来ないんだろうけど。
「……神崎さん、今日ご家族がいらしてましたか?」
「ううん、来てないよ?」
「……そうですか……」
このまま、穏やかな日々が続けばいいな。
そう、思っていたのに。