第81章 正真
「気持ちって、説明出来るもんばっかじゃないって、みわに教えて貰った部分が、大きいっスからねえ……」
最後の沈黙に被さるようにして、かもめの声が空に響いた。
今度はそれを追うように波の音と笑い声が届いて……。
また少し、気持ちが鎮まっていく。
「……赤司さんに、お話してくれたんだね。業者を斡旋するの、協力してくれるって連絡頂いたの」
「あー……、うん。勝手して、良くないかもとは思ったんスけど」
耳が折れた柴犬のような表情。
男らしい表情とは全く異なる色合いの顔に、笑っちゃいけないんだろうけれど、ちょっと和む。
「ううん。凄く助かるよ、ありがとう。お願いしようと思っていたんだけれど……詳しい調査はまだ、気持ちが落ち着いてからにしようかなって」
「ん、そっか」
なんだか、現実を受け止める事が出来なそうで。
まずは、亡くなってしまったという事実を受け入れられるようにならなきゃ。
それに……
「それよりもまず……お墓まいりに行きたいんだ」
お父さんに、会いに行きたい。
本当は、こんな形じゃ……。
そう考えただけなのに、何故か目元がまた熱くなって、鼻がツンと痛む。
「オレも、一緒に行っていいスか?」
大きな手が頭を撫でて、続く言葉はいつも通り、私を気遣ったものだった。
「大丈夫だよ、涼太は忙しいんだから」
「いや、みわがイヤじゃないなら、行かせて欲しいんスけど」
……そんな風に言われたら、強く断れない。
「そんな、嫌なわけないよ」
「じゃあ、都合付けるから、みわの予定が分かったら言って」
こうなったら、涼太はもう引かない。
頭の中のスケジュールを呼び起こす。
「う、うん、多分次の水曜日になると思う。確か、バイトは午後からだったから」
「オッケー。水曜はオレも講義午後からっスわ」
涼太は、スマートフォンでささっと何かを操作して、またすぐにポケットにしまった。
以前聞いた、スケジュールアプリに入力したんだろう。
車に戻ったら、手帳に書き留めておかなくちゃ。