第81章 正真
「言っていいんスよ、なんで黙ってたんだって、なんでもっと早く言ってくんなかったんだって」
「ううん、思わないよ」
思うわけない。
でも、思うのは……もっと早くに言って、涼太に楽になって欲しかった。
「言わないでいるって、凄く辛い事だと思うから。本当に、申し訳ないと思ってるの……無関係の涼太に、そんな思いをさせて」
「こらこらこらこら、ちょっと待って! 無関係とか言わないでくんないっスか!」
「だって……」
そうは言われても、涼太は無関係だ。
全く関係ないのに、長い期間巻き込まれて。
「みわのコトで、オレが無関係とかないから! 逆に、オレのコトでみわが無関係とか絶対にないから!」
「ええっ!」
絶対に、そう言い切れる涼太の強さが、羨ましくなる事もある。
でも本当に、私はそんなところまで許してもらえるほどの人間じゃないから。
「う、これ……ただの束縛オトコっスね……かっこ悪」
涼太はまた、少し眉を顰めて俯いた。
そして……すぐに、その顔を上げた。
「とにかくね、もうオレは知ってるから……みわが、ちゃんと話せるようになるまでは、言わなくていいんスよ」
「え……」
「きっと今は、突然すぎて気持ちが追いついてないんじゃないスか。無理して、今の気持ちとか説明する必要、ないから。みわのタイミングで、いいんスよ」
おばあちゃんの時も……言ってくれた。
無理に受け止める必要はないって。
説明出来ない感情が、その言葉を受けて波立つのをやめる。
考えても、どうにもならない気持ちって、ある。
涼太を好きだという気持ちだって、そのうちのひとつだ。
自分自身なのに、分からない事ばかり。
「うん……やっぱり、色々考えたんだけれど、うまく言えそうになくて……びっくり、なのかな、寂しい、なのかな、悲しい、なのかな……」
実感のないまま、もう会えない事実を知って……多分、受け入れられていないんだろう。
こころが硬化してしまったみたいだ。