第81章 正真
さっきのおばあちゃんの言葉が、胸の中でずっとぴかぴかしてる。
当たり前、って人それぞれなんだって。
そうだよね。
ひとと違う事をずっと負い目に感じて生きているけれど、皆違って、いいんだよね。
食後の緑茶に口をつけて、ほっと一息ついた。
テレビもつけずに、静かな空間。
「みわ、聞いて欲しいんだけれど」
「……うん」
さっきの、続きだよね。
おばあちゃんは、私がお父さんとしたい事を聞いて、どうしたかったんだろう?
「ばあちゃんはね」
おばあちゃんは、いつもより硬い声でそう言って、少し長めのまばたきをした。
「おばあちゃん……?」
「ばあちゃんはね、みわの父親……みわのお父さんが今どうしてるのか、知っているんだよ」
「え……」
すっと、身体中から血液が抜けて行くような感覚。
おばあちゃんが、お父さんの現状を知ってる?
「みわが成人したら、きちんと話そうと思っていたの。今はバスケットが忙しいみたいだし、気持ちも環境も落ち着いたら、と思ってたんだけれどね」
突然の話に、言葉が出ない。
目が乾く。
「これから、多くはないけれど、ばあちゃんが知ってるだけの事をみわに話すわ。それを聞いて、まだ深く知りたいと思ったら、その時は調査会社に依頼して」
口の中もカラカラだ。
骨が機械仕掛けになってしまったのか、ゆっくり頷くと、首がギシギシと軋んだ。
おばあちゃんの話を聞いて、まだ深く知りたいと思ったら……って、どういう意味なんだろう。
なんか、迂闊には会いに行けない職業なのかな。
それとも、有名人だったりとか……。
貧相な想像を総動員しても、しっくりくる解は得られない。
「分かった……。おばあちゃんのお話を聞いてから、決めるね」
やっとそれだけ、言えた。
おばあちゃんはお茶をひとくち飲むと、真っ直ぐに私を見据えて口を開いた。
「みわ、みわのお父さんはね、もう亡くなっているの」